「お待ちどうさま〜」
首をガックリうなだれているところへそんな声が聞こえた。顔を上げると、うどん屋のご主人が湯がき立ての釜揚げうどんをお盆に乗せて目の前に立っていた。
「どうぞ、ごゆっくり!」
ご主人はテーブルの上にお盆を置き、足早にお店の中へ戻っていった。そして目の前に置かれたうどんの量を見て、思わず目を見張った。けっこうな量である。うっ、これを何分で食べ切れるだろうか。
時計を見ると、15時50分。ヤ、ヤバイ。少しだけいただいて、さっさと立ち去ろうか。いやいや、お接待として用意してくれたうどんである。食べ残しなどゼッタイ許されない。
「いただきます」と手を合わせる。そしてお箸とうどんのつゆ入れを手に持つや、一気にかき込むように釜揚げうどんを食べ始めた。
ズルズル、ズズーッ、ズズーッ、モグモグ、モグモグ。ハァ、フゥ、ングング、、、ズルズル、ズズーッ、ングング、、、フゥ、ング、、、。
もう食べるのに必死である。そして5分ぐらいですべて食べ終え、お箸とつゆ入れをテーブルの上に置く。とにかくごちそうさまと手を合わせた。
そして急ぎ納め札を書き、リュックを背負って中のご主人に声をかけた。
「ごちそうさまです。」
「え〜っ!もう食べたの?」
「ハイ、ちょっと急ぎますもので、、、ありがとうございました、ンップ、、。」
ご主人にお礼の納め札を渡し、私はタプタプのお腹をさすりながら、そそくさとそのうどん屋をあとにした。
時刻はちょうど16時。とにかく急ごう。早歩きでタッタカタッタカ歩き始める。が、胃の中でまだ消化し切れていないうどんが食道の辺りを行ったりきたりして、ンップ、ググ、ング、、苦しい、、。足の運びにもブレーキがかかる。
あぁマイッタ。まさかこんなことになろうとは、、、。本当ならもっと気楽に余裕を持って歩けるはずだったのに。
しかしあのうどん屋のご主人には申し訳ないなと思った。もっと時間があれば、もっとゆっくり味わって、最後は「おいしかったので、2パックほど買わせてもらいます。」というのが礼儀だろう。
それをタダで食べるだけ食べて、そそくさとお店をあとにするなんて。あぁ、こんなことなら食べなきゃよかった。バカヤロー、俺の大バカヤロー!!
そんなことをあれこれ思いながら、74番甲山寺へのへんろ道を急いだ。
甲山寺までは約2、2km。ほどなくして着くだろう。、、、と思っていたら、この短い距離で道を間違えていることに気づいた。何てこった。ヤバイ。
左手に神社が見えた。春日神社とある。地図を確認すると、オイオイへんろ道からはずれてるじゃないか。
そこから慌ててタタタタタッと走り始める。そして息せき切って74番甲山寺に駆け込み、早々に参拝・納経を終えた。こんなことだから当然に甲山寺の境内の風景などいっさい記憶に残っていない。
しかし甲山寺を出た時間はよく覚えている。16時45分だった。次はお大師様ゆかりの75番善通寺である。その距離約1、6km。さぁ急ごう。
普通に歩いていては間に合わない。急げ、急げ、時計に何度も目をやりながらタッタカタッタカ歩く。そして16時50分を過ぎたところからまたタタタタタッと走り出す。
街並みも人の流れも賑やかになってきた。もう善通寺は目の前である。とにかく先に納経をさせてもらおう。納経所よ、近くにあってくれ。納経所〜!納経所〜っ!
そしてなんとか御影堂(みえどう)の山門前に到着。もうグダグダのバテバテ状態である。ハァハァ、ゼェゼェ、ハァハァ、ゼェゼェ、、、。
善通寺の境内は広い。左にも右にもお堂のような建物があった。どれが本堂なんだ。どれが御影堂なんだ。いやとにかく納経所は、、納経所はどこなんだ。
ハァハァと2、3度左右をキョロキョロしたあと、時計を見た。16時59分。あ、、あ、、あと1分!。
そのとき私はとっさに御影堂の山門の中に飛び込んだのだった。
甲山寺への道のりはのんびりと楽しい道のりでした。
曼荼羅寺で若い女性がお参りを済ませて先に出発していて、
私はその後ろ姿を遠目に見つつ、辺りの景色を見ながら歩きました。
途中でその女性(おへんろさんではなかったような・・)
があぜ道を行くのが見えたので、地図を確かめるとその道が甲山寺への道でした。
山門の第一印象はお寺というより武家屋敷のような感じでした。
善通寺へは途中で間違えて西側のバスの駐車場から入り、
今までのお寺と違って「えらい広いとこやなぁ」と思いました。
>ングング、、、ズルズル、>ズズーッ、ングング、、、フゥ、ング、、、。
すばらしい表現です!!
>ごちそうさまです。」「え〜っ!もう食べたの?」
きっとご主人は“1日以上食べ物にありつけなかったおへんろさん?”と思っ
たでしょう!“ご無事に!この先もよいお接待がありますように!”と後姿
を見送ったでしょうね。(^▽^)
>急いで食べたうどんの味は忘れないでしょう。
それがですね、、、、、ハハハ、、、、まぁ、わかりまっしゃろ。
ヨカッタですな。甲山寺まで楽しく歩けて、、、。
私もそないしたかったんです。そうする予定やったんですよ。なのに、あぁ〜、、、。
まぁまた次に行く楽しみが残ったと思うようにします。
必死に食べてる状況が伝わりましたでしょうか。
ご主人がそんな優しい気持ちで見送ってくださったどうか・・・。
なんかね、業者の対応に追われてホントに大わらわだったんですよ。
しかしご主人には悪いことをしました。今度行ったら必ず買って帰りたいと思っています。