2009年08月16日

四国へんろ【138】 急げ!太山寺へ

51番石手寺をあとにしたのが、ちょうど15時。地図を見ると、ここから52番太山寺までのルートは3つあった。その中で一番距離の短いルートでも10.5kmとある。
納経締め切りは17時だ。普通に時速4kmで歩いていては、到底間に合わない。早足で行かねば。それでも途中休憩を挟まずに、早足で2時間歩き続けてギリギリ間に合うかどうかというところである。

幸い、今日の宿は52番太山寺にほど近い。間に合わなければ翌朝一番に参拝すればいいのだ。取り敢えず行けるところまで行こう。自分の力を試すいい機会じゃないか。ヨシッ、行くか!

そう気合いを入れた私は、やや早足で歩き始めた。

そして義安寺の前を通り過ぎ、道後温泉本館のほうへ向かうのに道を右に折れたときだった。対向して走ってきた一台の乗用車が私の目前で停まり、助手席から可愛い女の子の声が聞こえた。

「お接待させてくださいっ!」

えっ!と驚く。見ると、助手席にいた小さな女の子が、確かお菓子の詰め合わせのような袋を窓越しに差し出してきた。お接待である。

「あ、、、ありがとう、、、。」

突然のことでとまどいながら、それを受け取った。可愛く微笑む女の子。運転席にはその子のお母さんらしき人が、ニッコリ微笑みながらハンドルを握っていた。

その母娘の慈愛に溢れた優しい微笑みにホッと心が和む。あとでわかったことなのであるが、どうやらこの母娘はこの近辺にお住まいの方で、日曜・祝日となると歩きへんろさんを探しながらお接待してまわっておられるようだった。

なんとありがたいことだろうか。心から感謝感謝である。しかし私としたことが、お礼の納め札を渡すのを忘れていた。(まぁよく渡すのを忘れるのだが、ホントにバカヤロウである。)

母娘から元気をもらって、再び歩き始める。ほどなくして道後温泉本館が見えてきた。相変わらず多くの人出で賑わっている。そして本館前の人だかりの間をかき分けていき、温泉街を足早に通り過ぎていく。

国道196号線に並行する小さな川沿いの道を、けっこうな急ぎ足でタッタカタッタカ歩く。しかしさすがに疲れてきた。ちょっと休憩を入れたいところだが、休んでは17時の納経時間には間に合わない。行かなければ。そう思いつつ、歯を食いしばって必死に歩き続ける。

そしてどのへんだったろうか。またどこかでへんろ札を見逃したのか、ちょっと道がわからなくなってしまった。立ち止まり、地図を開いてキョロキョロと周りを見渡す。

ルート的にはそんなにゴチャゴチャとはしていない。、、、なのにチクショー、自分が地図のどの地点にいるのかはっきりわからない。うわぁ、ヤベェぞ、、、。

それから地図を片手にウロウロしていると、電車が走っているのが見えた。アレだッ!太山寺は線路の向こう方面にあるのだ。とにかく線路に向かって踏み切りを探そう。

自然に小走りに走り出した。そしてなんとか踏み切りを見つけ、ようやく自分の居場所らしきところもわかった。

時刻は16時を過ぎている。とにかく急ごうと、足早に踏切を渡ってへんろ道を右に折れていく。

少し行くと左手に酒屋さんがあった。目の前に自販機もズラッと並んでいる。石手寺から休憩なしで歩いてきて、さすがにのどが渇いていた私は、吸い寄せられるように自販機に近づき、スポーツドリンク系のペットボトルを買って一気に飲み干した。ふぅ、さすがにキツイなぁ。

しかしボヤボヤはしていられない。さ、行こう、と飲み干したペットボトルを空容器入れの中に入れたところへ、酒屋のご主人が出てきて声をかけてきた。

「太山寺まで行くんか?」
「え!あ、ハイ、そうです。」
「道はわかってるんか?教えよか?」
「あぁ大丈夫ですよ。地図がありますから。ありがとうございます。」

私はご主人に軽く頭を下げて、また足早に歩き出した。

「間違えやすいところがあるから、気ぃつけや。」

(・・・え! 何! 間違えやすい?・・・)

背中越しに聞こえたそのご主人の言葉に、私はハッとして足を止めたのだった。

posted by こうへい at 22:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 歩きへんろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お接待は、その飲料・食料によって生き抜くのではないですが、息抜きができるし、
見守っていただいている心がありがたいです。でもお接待ずれした遍路もいると聞
きます。もらって当然みたいな態度で、ひどいのは、お接待を要求するコジキ遍路
もいるそうです。(「乞い」願うのでもない!)

曲り角を一つ間違うと「別世界」へと入ってしまいます。ましてや夕方。太山寺へ
の道では私は道を少し間違いました。(「・・同行二人」の地図は使っていません
でした。) 間違って来た道を戻っているのを何度も見ている地元の人は、また間
違ったな、と思うでしょうね。ここは聴く耳を向けるのが正解でしょう!
Posted by よし男 at 2009年08月17日 22:41
◆よし男様
石手寺から太山寺までのルートなんですが、よし男さんは歩かれました?
あとで知ったんですが、このルートって、単純そうで実はわかりにくいらしいですね。まぁ私も本文に書いた通り、ちょっと迷ったわけでして、、、。
 
でですね、このときお接待をしてくださった母娘さんなんですが、ほかにこのルートの手製地図を作られて、希望する方に無料配布されたりもしてるそうです。
またそんなお接待活動が認められて、最近ですが表彰されたような話も聞きました。ホント素晴らしいことです。

たぶんあの方に間違いないとは思いますけど、改めて御礼申し上げます。○○○松山様、ホントにありがとうございました。(読んでてくださったら、嬉しいなぁ・・・。)

確かにお接待は乞い願うものじゃないとは思いますが、お大師様と衛門三郎の逸話で、おへんろ中のお大師様が三郎に「芋を分けてくれんか」と言ったのを、三郎が「うるせぇ〜」と追い払った結果、三郎の子供8人が次々に死んだとのことですよね。

まぁお大師様が殺したわけじゃないんでしょうけど、そのときお大師様は物乞いされたわけで、その行為はどうなんだろうとちょっと考えさせられます。
Posted by こうへい at 2009年08月18日 00:37
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