ときわ旅館に電話を入れる。電話に出たのは、若い女性の声だった。
「あ、すいません、歩きへんろをしてる者ですが、今日は泊まれますでしょうか?」
私がそう言うと、一瞬間を置いてから、意外な答えが返ってきた。
「・・・ありがとうございますっ!」(えっ?、、ありがとうございますっ、、??、、)
いきなりお礼だけを言われて少々戸惑いながら、
「あ、いや、あのぅ、、ということは、泊まれるんですか?」
「ハイッ!ありがとうございます。今年初めてのお客さんです。」
「そうなんですか。そりゃ光栄ですねぇ。じゃひと部屋お願いします。」
「わかりました。、、、あ、でもちょっと申し訳ないんですけど、、、」
「何でしょうか?」
「ちょっと今日はお食事の用意ができないんですけど、いいでしょうか。」
「あぁ全然構わんですよ。僕も今日そちらに着くのがちょっと遅くなりそうなんで・・・」
「いまどこにいらっしゃるんですか?」
「明石寺(めいせきじ)を出てちょっと来たところです。」
「じゃぁこちらへは何時頃に、、、」
「そうですねぇ。ヘタしたら、、、19時、、、ぐらいになるかもです。なんで、夕食があんまり遅くなるのもなぁって思ってましたから。」
「あぁそうですか。うちの近くには食事できるお店もありますし、少し行ったらローソンとかもありますから。」
「そうですか。じゃぁ食事の心配はないですね。頑張って行きますんで、よろしくお願いします。」
「わかりました。気をつけてお越しください。」
一般的におへんろ宿は、老夫婦で経営していたりする場合がほとんどである。故に、電話に出る声も大体がおばあちゃんの声、あるいはおじいちゃんの声である。
なので、若い女性の声が聞こえたのもそうだが、いきなりお礼だけを言われたのも初めてでちょっと驚いた。食事が用意できないというのも納得で、何しろ当日の昼過ぎにいきなり泊めてくれと言われても、事前に食材を用意してなければ無理なことだろう。
だいたい新年が明けてまだ5日である。しかも私が今年初めてのお客さん。電話に出た若い女性が一瞬間を置いたのは、昼過ぎて突然の当日予約だったのでビックリしたのかもしれなかった。
それにしても、私が今年初めてのお客さんなのか。、、う〜ん、そうかぁ、、、。だからどうだというわけでもないのだが、妙に嬉しい気分になって、自然と口元がほころんだ。
ヨシッ、宿も決まった。さぁ行くか! ということで、私は意気揚々と歩き出した。
それから国道56号線に並行するへんろ道を進み、やがて56号線に合流、そしてまたへんろ道に入っては56号線に合流するといったことを数回繰り返し、やがて56号線沿いにある鳥坂(とさか)峠越えのへんろ道への登り口までやってきた。時刻は15時30分過ぎ。まだ日は高かったが、な〜んとなく薄暗さも感じられるようなそんな感じもしていた。
さて、ここからどうしよう。私はちょっと迷った。このまま56号線を行って鳥坂隧道を通るか、鳥坂峠越えのへんろ道で山を越えていくか。
もっと時間が早ければ、迷わず山越えルートで行くのだが、しかしもうあと2時間もすればドップリと日は暮れるだろう。このまま山越えルートで行って、山の中でどんどん薄暗くなっていくのも嫌だしなぁ〜。かといって、距離の長そうな鳥坂隧道を通るのもなぁ〜・・・う〜ん、どうしよう・・・。
休憩がてら、地図を取り出し、その後の時間経過を考えながら、どちらで行くかじっくり考える。
そしてふと空の色が気になった。見上げると、まだじゅうぶんに明るかったが、ここへ着いたときより若干薄暗くなっているように感じられた。
ヤバイぞ、こりゃ暮れ出したら一気かもしれんなぁ・・・。伊予大洲まであと約10kmか。時間にして約2時間半。いや休憩を入れたらもうちょっとかかるか。さらに山越えで行くと確実にそれ以上の時間はかかる。宿にはできるだけ早く着きたいしなぁ・・・。
そうやって私が悩みに悩んだ挙句に決めたルートは、鳥坂隧道突破ルートだったのである。
2009年06月21日
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秋冬は3時半といえば暗くなりかけます。そうでなくても太陽も早く行かなくては、と大急ぎで地平線に向かうのでしょう。雲がなければ一気に暗くなります。
なるほど、鳥坂隧道は1.1Kmとかなり長いですね。(四国TNLプロジェクトより http://cdcdcd.sansu.org/tnl/all/all_ehime.htmありがたい情報です! 感謝)
しかし悩んで決定した決定は正解でしょう!決して鳥越し苦労ではありませんでした。山越えでは、より長い距離に加えて、迷いながら歩くことを考えれば、照明付のトンネルはこの際絶対優れていますね。あ、ガードレールが付いていましたか?
おへんろ帰りということですから、おへんろさんの格好はされてたんですよね?
だったらおぞうに付きのおせち料理は、お接待以外の何ものでもなかったんじゃないっすかねぇ。ウンウン。
>あ、ガードレールが付いていましたか?
ガードレールがあった記憶は・・・ないですねぇ。まぁちょうど次の記事をUPしたところでしたので、取り敢えずそれを読んでみてください。
ただトンネルの状況とかも、途切れ途切れな頼りない記憶なので、合ってるかどうか自信はありませんです。(汗)
あ、いや、いや、遍路装束は外していたはずです。
そうでしたか。でもさすがに菅笠やお杖は隠せませんでしょ?
まぁどちらにしても良かったじゃないですか。もてなしてくださったんですから。
ホントに、感謝感謝ですね。