T君との和やかな夕餉のときが静かに過ぎてゆく。そして私はビールを2本(生中2杯だったか、、?)も飲んで、フワフワと気分よく酔っていた。
そのときうしろからふと声をかけられた。
「おへんろさんですか?」
えっ!と思い、振り返るとそこには60代ぐらいの男性が立っていた。その男性は、私がテーブルの上に置いていた同行二人の地図を見て、私とT君がおへんろさんだと気づいたようだった。
「いや、私も今、車でまわってるところでしてね、お二人は歩きさんですか?」
「えぇ、そうです。」
「やっぱりそうですか。すごいなぁ。、、、、ちょっとココいいですか?」
そういって男性は私の隣(T君からは対面)にさっさと腰掛けた。
この男性であるが、あのおしゃべりオバハンほどではないにしろ、とてもよくしゃべる人で、久しぶりにおへんろさんと同宿になったことがよほど嬉しくかったらしく、私がフンフンと聞いていると、どんどん口調も滑らかになってきて、あとからあとから話題が出てきた。
特にその男性がおへんろに出るキッカケになった話で、自分が公私ともに辛かった時期に身内の不幸が重なったとかで、
「そうですか。私もお世話になった人を事故で亡くしましてね。それがキッカケと言えばキッカケなんですけど・・・。そりゃご主人も大変な時期に、辛かったでしょうねぇ。」
私がそう言うと、男性は耐え切れなくなったのか言葉に詰まり、嗚咽し始めた。そして涙ながらにその苦しく辛かった頃のことを延々と話し出す。
そしてしばらくして、食事を終えていたT君が、「あ、そうだ、ちょっと失礼します。」といって席を立っていった。
(お〜い、T君、置いてかないでくれよ〜。)
チクショー、T君の野郎め、うまいこと逃げていきやがって・・・と思いつつ、私は酔っ払った頭でその男性の話をボンヤリと聞き続けた。
う〜眠い。瞼が重い。どこかで切らないと男性の話は終わりそうもなかった。そして私は夕食の最後の一口を食べ終え、コップの水を飲み干してコンとテーブルの上に置き、
「あ、すみません、明日早くに出ますので、ちょっとこのへんで・・・。」
「あぁそうですか。すみません、すみません。私もちょっと、つい、その調子に乗ってしまって、、、すみません。、、、あ、そうだ、コレ、受け取ってください。」
そういって、男性は納め札を私に差し出した。それは銀色の納め札だった。
そして2人して席を立ち、男性が頭を下げて、
「ありがとうございました。何だか胸のつかえが下りました。ホントにありがとう。」
「いえ、そんな、恐縮です。」
と私も頭を下げる。
ホントに恐縮も恐縮で、けっこう酔っていた私は、男性の話をほとんどうわの空で聞いていた感じだったのだ。でも男性は喜んでくれている。ま、それでいいことにしようか。喜んでくれてるんだし・・・。うん、そうしよう。
そして私は男性から求められるままに握手に応じ、自分の部屋に戻っていった。
そう言えば、そのとき部屋のドアはスンナリ開いてくれたのだろうか。まったく覚えていない。
まぁまた開けるのに苦労したような記憶もないので、ココは取り敢えずスンナリと、ということにしておこう。うん、そうしよう。
2009年06月08日
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特に自家用車での車へんろと歩きへんろでは時間の余裕が違い過ぎます。話の切れ目を待
っていても、そんな隙間を作らず話す人って、います、います! しかし悩みを聞いて
もらうには全くの他人がいいです。利害関係がなく知人に伝わることもなく、解決策を
期待するでもなく、心のわだかまりを安全弁から排出するようなものでしょう。
信仰心が厚くても、お大師様の像や如来様に向かって悩みを語りかける人はいないと思い
ます。こうへいさんが、聴いてあげたことは良いことでした。客観的に見て、そう感じました。
う〜ん、あれって、私はお接待をしていたことになるんでしょうかねぇ、、、、。
もしそうなら、嬉しいかな。何ちゅうても、どこかのへんろ小屋でみかんをガブガブ食ってしまいましたし、、、。
ま、そのつまりは、いわゆる「お接待返し」ということで許していただければ、、、f(^o^:;)
ただ男性が泣き出したときは、ちょっと辛かったですよ。少なからず周りのテーブルにも食事客はいましたからねぇ、、、。