部屋に入る際、T君に話しかけた。
「T君、晩メシは?」
「これからですよ。」
「ほな、あとでいっしょに食べようや。」
「そうですね。」
「ほな、、(と、時計を見て)、、1時間後ぐらいに、下のレストランで。」
「わかりました。」
私は取り合えずリュックを降ろしてホッと一息を入れ、入浴後、レストランに行こうと部屋を出た。
そしてふと通路の奥に目をやると、年配のご夫婦が自分たちの部屋の前で何やらガチャガチャやっているのが見えた。どうやらこの開きにくいドアに悪戦苦闘しているようだった。
これは教えてあげなければ、、、、と、私はそのご夫婦に近づいていった。
「あ、もしかして、ドア、開きませんか?」
「あぁ、そうなのよ。どうしたらいいの?ホントにもう・・・。」
「ここのドア、開きにくいんですよ。ちょっと貸してください。」
と鍵を受け取り、
「これね、ちょっとコツがありましてね、、、」
T君が私に実演してくれたように、私もそのご夫婦の前で鮮やかにドアを開けようとしてみせた。
「これを、、、こう、して、、、こうやって、こう押すとですね、、、う、うん?、、あれ?、、」 (な、なんじゃこりゃ、開かへんやないか)
すんなり開くはずが2、3回トライしても開かない。ドアをガタガタやりつつ、ご夫婦からのこの人大丈夫かといった視線も感じて、少々焦る。
「あれ?、、お、おかしいなぁ、、これで開くはずやのに、、、う〜ん、、、こうして、、、こないして、、、、お〜、お〜っとっ、、、」
いきなりドアが開いた。そのとき体重をかなりかけてドアを押したため、スンナリ押し開いたドアに倒れこみ、危うくひっくり返るところだった。
体勢を立て直し、「いや、まぁ、こうやって開けるんですよ。」、、、と照れ笑い。そしてご夫婦から取り敢えずのお礼の言葉をいただき、その場をあとにした。
(チクショー、T君のように一発で開けられるつもりだったのに・・・。)
レストランにはまだT君は来ていなかった。そして空いているテーブルの一角に座って、持ってきた同行二人の地図を開く。
今回の年越しへんろ行も、明日あさっての2日間で終わりである。帰りのバスチケットは、あさっての14時30分松山駅発。それまでどうやって歩くか考える。またこの考える時間がけっこう楽しいものである。
ここは宇和島かぁ。なんとか明日は伊予大洲まで歩いて、あさって内子までの約10kmを歩く、そこからJRで松山に出ることにするか。そうすれば、道後温泉にゆっくり浸かれる時間も取れるかな。
しかし明日、伊予大洲までとなるとココから約40km。けっこうな距離だ。その間、札所も3ヵ寺ある。こりゃ朝早く出ないとまた夜が遅くなりそうだ。
最初の札所、41番龍光寺までは約7km。納経が始まる朝7時頃に着けるようにココを出るとするか。ヨシ、明日は5時出発だな。
そんなことをアレコレ思案しているところへT君がやってきた。
「すみません。遅れまして。」
「あぁ、お疲れさん。なぁT君、明日やねんけどな、俺、また明日早うにココ出ようと思うねん。」
「何時に出るんですか?」
「まぁ5時やな。」
「じゃぁ朝食は?」
「この近くのコンビニで買うていくよ。T君はどうすんの?」
「僕はココで食べていくつもりです。」
「そうか。けど早よ出ても、君にはいずれ追いつかれるんやろな。ホンマにビックリしたデ、今日は。」
「ノンストップで行きましたからねぇ。」
「やっぱりそうかぁ。俺は山ン中で3回ぐらい休憩したからなぁ。」
「松尾トンネルは通りました?」
「あぁ、あの長いとこ。ううん、山越えのコースで行ったよ。」
「そうですか。手前のパン屋ってありましたっけ?」
「手前のパン屋?」
地図をみると、曽我屋ベーカリーと書いてある。
「あぁ、これなぁ。どうやったやろ、、?、俺はへんろ札に従って行っただけやねんけど。」
「そうですかぁ。僕も山越えで行くつもりだったんですけどね。で、ずっとパン屋を目印に歩いてたんですけど、なかったんですよ。そのうち、トンネルの前まで来ちゃって・・・。」
「で、どうしたの?」
「もう戻るのも何なんで、そのまんまトンネルを通り抜けました。」
「あの長いとこを・・・ようやるね。」
「息苦しいだろうと思って、一気に走り抜けましたよ。」
「走り抜けたぁ〜!、、走ったの? 何分で?」
「そうですねぇ、確か10分ぐらいだったと思いますけど。」
「ハァ〜、、、スゲェ〜、、、」
通し打ちするだけのリュックを背負って、あの長いトンネルを10分で・・・。また私はユラユラと首を横に振った。
「なぁT君、、、T君って、かけ連れってしたことないやろ?」
「かけ連れって何ですか?」
「途中でいっしょになった歩きへんろさんといっしょに歩くことやねん。」
「あぁ、それはないですねぇ。」
「そら、そうやわなぁ・・・。」
互いに苦笑いをする私とT君。もう私は驚いてばっかりである。しかしホントに驚かされたのは、翌日、当然のように私に追いついてきたT君の、そのときの姿だったのである。
2009年06月06日
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>ずっとパン屋を目印に歩いてたんですけど、なかったんですよ。・・・。」
これだ! これ、これ! 都市感覚で目印を探していると、イメージが異なる建物だったり
して見落とすことがあります。グーグル画像検索で調べたら、この店、民宿みたいな外観
ですね。または、道の反対側を、きれいな女性が歩いていて、失礼にならないように、さり
げなく見て、いや〜、今日はついてるね!なんてほくそえんでいると目印を見落とします。
私は区切り打ちの帰り、宇和島では久しぶりの町の雰囲気を楽しんで、和霊神社とか見
て来ました。(祭りに出る赤い「牛鬼」って正体は何か知りたいです。)
「かけ連れ」は短距離なら出来ますが歩くペースの違い、目的、宿泊予定などの違いがあ
って、なかなかできませんね。しかし前後して、抜きつ抜かれつして歩いていると、似たよう
なものです。トンネルは急いで抜けるべきです。排気ガスの排気は空気のゆるい流れの方
向を作っているだけみたいですから。さらに、内部で火災事故、爆発事故が起きると出口は
2つだけ。こんなところで死にたくな〜い、といつも思います。
>3室ともドアの旋錠が開きにくいとは、ホテル全体が傾いて歪んでいるのでしょうか?
さぁ、どうでしょうねぇ。とにかく鍵の構造が他とは変わってることには間違いないです。
>グーグル画像検索で調べたら、この店、民宿みたいな外観
ですね。
画像検索ってストリートビューとは違うんですね。
で、私も見ました。確かに一般的なパン屋の外観じゃないですね。曽我屋っていう名前を覚えてたら気づくかもしれないですけど、「パン屋!パン屋!」と思ってたら、見過ごしそうですねぇ。
しかしグーグルってこんなことも出来るのか。すごいなぁ。
この画像検索機能は使ったことありませんでしたよ。教えてくださってありがとうございました。