☆☆☆義援金寄付ならびに節電のお願い☆☆☆

2008年12月31日

四国へんろ【71】 追い越したつもりが・・・

残りのうどんとビールをたいらげた私は、お代を払うや、あわてて外に飛びだした。そしてポンチョをかぶり、しっかりと菅笠の紐も結び締めて、その夫婦のあとを追いかけた。

雨はドシャ降りというほどではなかったが、いわゆる本降り状態が続いている。しかしそんなことはいっさい気にならなかった。

あんなか弱そうな女性があえて厳しい道に挑もうとしているのに、安易に物事をあきらめようとした自分が恥ずかしく思えた。
そもそも歩きへんろとは、修行の旅なのだ。単にこれしきの雨でへこたれていては、修行をしている意味がないじゃないか。特にどこそこが痛くて歩けないわけじゃない。しっかりしろよ、俺!と、自分で自分を叱咤する。

とにかく行こう、神峰寺まで。間に合うかどうかなど、もうどうでもいい。とにかく行こう。行こう。行こう!。行こう!!。

気を取り直した私は、先ほどとは違って快調なペースで歩を進めていった。しかしなかなかあの夫婦のうしろ姿が見えてこない。か弱そうに見えて、けっこうな健脚なのだろうか。

快調なペースというより、かなりの早足で歩いている。このペースではとても神峰寺までは持たないだろう。しばらくして、雨でかすんだ視界の向うにあの夫婦のうしろ姿が見えてきた。それを見て、ややペースを落とし、その夫婦の姿を見失わないように歩き続ける。

やがて羽根地区に入り、へんろ道も国道55号線から離れて1本内側の道に入っていく。そしてつかず離れず歩いていた夫婦が前方で立ち止まり、右手の山を指差したり、何やら迷って話し合っているのが見えた。が、ちょっとしてから夫婦は再び前方に向いて歩き始めた。

あの夫婦は何を迷っていたんだろう。そう思って夫婦が立ち止まっていた地点に着くと、そこには右手の山を越えていく赤いへんろ標識が立っていた。
地図によると、この右手の山を越えていくコースは、中山峠越えになるらしく、このまま前方に進んで海岸沿いのコースを行くよりも、距離的に1.2qほど短いようだった。そしてあの夫婦は、けっこうな雨ということもあったのだろうか、山道を避けて無難な海岸沿いのコースを選んだようだった。

さて自分はどうするか。遠ざかっていく夫婦のうしろ姿を見つめながら、「ヨシッ、この山道を行って追い越してやろう」と考えて、迷わず中山峠越えのコースに入っていった。

先ほどまでの自分なら、おそらく海岸沿いの道を選んでいただろうと思う。だいたい朝から山道で思いっきり道を間違えたし、わざわざその二の舞を演じるような危険を犯す必要もないのだから。

そんなわけで、続けて同じ失敗を繰り返すまいと、へんろ道の目印となる札や布切れをしっかり確認しながら山道を上っていった。
山道といっても険しい急坂もなく、なだらかな上り坂である。それほどヒーヒーすることもなく、知らない間に峠を越えていたのか、やがて山道は下り坂になり、再び海岸沿いの国道55号線に下りてきた。
そして前後をキョロキョロしながらあの夫婦の姿を探す。しかしどこにも見当たらない。どうやら思惑通りに追い越せたようである。

ヨシッ、このまま先に行って、神峰寺であの二人を出迎えてやろう。きっと驚くだろうなぁ。年甲斐もなく、イタズラ坊主のようにほくそえんで、私は国道55号線を歩き始めた。

しばらく行くとバス停があった。そこにベンチもあったが、簡易な屋根の下ということで、雨もかなり降り込んでいてビショ濡れだった。
が、そんなことはお構いなしで、チョチョイとタオルで軽く拭いてそのベンチに腰を下ろし、小休止することにした。先ほどまで濡れたベンチに座ることさえためらっていた自分とは大違いである。

そしてゆっくりペットボトルのお茶を口に含んでいると、「お早いですねぇ。」という女性の声が聞こえた。えっ!と思って、声のするほうを見ると、先ほどの夫婦がすぐそこに立っていた。思わず飲んでいたお茶がわずかに気管に入り込み、ゴホゴホと咳き込んだ。

「中山峠を越えられてきたんですか?」
「あ、ハイ、そうです。」
「あの山道はどうでした?」
「いやそれほどキツクなかったですよ。」
「そうですか。」

そんな他愛もない言葉を交わしたあと、「それじゃぁ」といって夫婦はそのまま先に歩いていった。

(ちょっとちょっとお二人さんよ。アンタたち、休憩しないのかい
・・・?。うどん屋を出てからヨユーで1時間以上は歩いてますよ。)

そんな心の中の言葉が聞こえるはずもなく、その夫婦はどんどんと先へ歩いていった。


posted by こうへい at 01:02| Comment(4) | TrackBack(0) | 歩きへんろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回のブログで、前後する歩きへんろの心理がまとめて表現されていると
感じます。どしゃ降りの中、無駄に歩いたとの思いは実に気力をそぎます。
”他のへんろができるなら、オレでもできるはず” 気力はやはり体を動
かす司令塔。潜在していたパワーが出てきましたね!
中山峠は日中歩くと、どうということもないのでしょうが、私は夕刻5時
ごろ歩き、すでに藪の中は真っ暗で、オソロシかったです。途中眼下に海
が見えたり、人家があったり、自動車の通る音が聞こえるので、方向は
間違いないと確信できました。

どんどん歩く夫婦。しかし、本番は神峯寺の真っ縦だ! さて、どうなる?
Posted by よし男 at 2008年12月31日 10:48
◆よし男様
潜在パワーかぁ。そうですねぇ。
彼女の存在がなかったら、アノ時あんなには絶対歩けなかったと思います。
潜在パワーとは、みずから出そうとして出るものじゃなく、誰かに引っ張り出してもらわないと出てこないものなんでしょうね、きっと。

さぁ神峰寺、どうなりますやら・・・。
あんまり期待せずにお待ちください。(汗)

Posted by こうへい at 2009年01月01日 23:47
>アンタたち、休憩しないのかい
この夫婦が休憩しないのか判りませんが、私は基本的に休憩しません。昼飯(時に朝飯)は別ですが、それ以外で立ち止まるのは、自動販売機などで、飲み物を買うときかトイレだけです。
休むと歩き出すのが辛い。身体が受けているダメージが大きいほど、再歩き出しの辛さも大きくなります。なのでひたすら歩く。
Posted by ネコ at 2009年07月05日 13:33
◆ネコ様
>休むと歩き出すのが辛い。

ネコさんの場合、ほとんど休まないから余計なんでしょうね。
私はそうでもないですね。まぁ、しょっちゅう休むからなんでしょうけど、、、。(汗)
Posted by こうへい at 2009年07月05日 18:14
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