玄関の扉は運良く開いてくれた。運良くというのは、外からパッと見る限り、なんとなく薄暗い感じがして、開いてないかもしれないと思ったからである。
取りあえず最初の関門は突破できた。
「すいませーーん!。こんにちはーー!。」
中に向かって大きな声で呼びかけると、おかみさんらしき女性が「ハイハイ」と言って出てきてくれた。
「あ、すいません。今日なんですけど、泊まれますでしょうか?」
するとおかみさんは、ちょっとビックリしたような表情で、一瞬間を置いてから、「あ、ハイ、いいですよ」と言ってくれた。
あとでわかったことだが、おかみさんのそのときの微妙なリアクションは、その日はほかに泊り客がおらず、いきなり飛び込み客がやって来たので、ちょっと焦ったのかもしれないということだった。
食事や風呂の説明をひと通り聞き、奥の部屋に案内される。
そして、「こちらへどうぞ」と通された部屋に入って、ビックリ。そこは少なくとも30畳ぐらいはありそうな広ーーい和室だった。
取りあえず部屋の片隅にリュックを降ろし、その場にヘタリ込んで室内を見渡す。しかし狭すぎるのも何だが、広すぎる部屋に一人ポツネンといるのも、なんとなく落ち着かないものである。とは言え、無事一夜の宿にありつけたのだ。感謝しなければ・・・。
風呂場で汗を流し、宿の浴衣に着替える。そしてのどが渇いたので、浴衣のまますぐ外にある自販機に買いに出た。
すぐそこに平等寺の山門と、行き来するおへんろさんの姿が見える。
そう言えば、あの若い女性へんろさんは、どうしただろう。
ちょっと気になって境内の中をのぞいて見たかったが、さすがにこの浴衣姿では恥ずかしくて近づけなかった。
コーラを買って部屋に戻る。ふと時計を見ると16時を過ぎたところだった。自分的にはエラく早めの宿入りだなと思ったが、昨夜は立江駅のベンチで過ごし、早朝からは鶴林・太龍のへんろころがしを越えてきたのだから、今日は早めにゆっくりするのもいいだろう。
そう思ってこの広い部屋で思い切り大の字になり、ゆっくりくつろいでいた。
「すいませーーん!」
少しウトウトしかけたところで、そんな呼び声が聞こえた。それは明らかに女性の声だった。
再び同じ呼び声が聞こえたので、部屋を出、玄関のほうに行ってみると、さっきの若い女性へんろさんが立っていた。
「ありゃ、あなたじゃないですか。」
「あぁ、こんにちは。あのぅ、宿の人は・・・?」
「あれ?いてはるはずやけどねぇ。ボクがこうして泊まってるんやから・・・」
と話しているところへ、外からおかみさんが帰ってきた。グッドタイミングである。
こうして結局彼女も同宿することになった。宿泊客は彼女と私の2人だけ。そして夕食もいっしょに食べることになった。
話を聞いてみると、彼女は神戸出身の27歳OL。私と同じくお盆休みを利用しての歩きへんろ行らしい。が、明日には徳島市内まで戻って、阿波踊りをナマで観て、神戸に帰るという。
「アタシの泊まってる部屋、メチャ広いんですよ。もうビックリしちゃいました」
「あ、そうなの?ボクんとこもですよ。30畳はあるかなぁ」
「エーーッ!それは広すぎーー!」
屈託なく笑う彼女。その容姿は、惜しくも美形の部類とは言いにくかったが、愛嬌のよさはバツグンだった。やはり「女は愛嬌」である。つくづくそう思った。
そんな他愛もないことから会話も弾み、これまでのおへんろ話などに花を咲かせながら、その夜は和やかに更けていった。
P.S.
しかし山茶花のおかみさん、あんな時間に突然チェックインして、よく夕食を作ってくれたものである。泊まった当時はよくわかっていなかったが、おへんろが進むに連れて、それは普通はあり得ない(たいていは素泊まりになる)ことだとわかってきた。
山茶花のおかみさんに感謝感謝である。
2008年09月27日
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広すぎて最初は落ち着きませんでしたね〜。
布団も隅のほうに寄せて寝ました(^^;
女将さんのさりげない気配りがうれしかったことを今でもよく覚えてます。
いらっしゃいませ。こんばんは。
コメントありがとうございます。
そうですか。泊まられましたか。
ありがたいお宿ですよねぇ。
>布団も隅のほうに寄せて寝ました(^^;
コレ、私もいっしょです。(笑)
ど真ん中では、とてもとても・・・・・。
あまり広い部屋だと落ち着かないのは私もおなじです。なにせ、
こぢんまりした飲み屋でくつろぎ、小さな喫茶店で生き抜きする
生活をしてきましたから、広い空間だと置物を除かれ体をさらされた
ゴキブリ、とまで卑下しなくともコリスのように不安になります。
この大部屋は団体客の宿泊を前提としているのか、または「相部屋」
を前提としているのか? 男女用大部屋が二つあればよい。
それとも宴会場か?
昔のへんろだけでなく旅人には相部屋は普通のことだったらしい。
街中では長屋住まいも多くてプライバシーなど二の次、または
見て見ぬふりをする生活だったのでしょう。
それとも宿泊客は【平等】に扱う、という意味でしょうか?!
うぉ! 矢継ぎ早にハテナマーク(?)の雨あられ・・・。
そんなん私ゃ山茶花のご主人でもありゃしませんので、わかりまへんがなぁ〜(汗)。
しかし山茶花には、いったい何部屋あるんやろぅ、、、。
彼女が泊まった部屋は、確か12畳以上はあるって言ってた記憶はあります。12畳以上ってことですから、もっとありそうな・・・。
そんなデカイ部屋ばかりじゃないとは思うんですけどねぇ。
今度泊まられる方がいらっしゃれば、よろしくコメントいただけたら嬉しいです。
どなたかよろしくお願いいたします。m(_ _)m
山茶花さんですが、昔は平等寺の前には何件か門前宿としてあったそうです。
20年位前に残った2件が廃業されてから平等寺門前からは宿がなくなりました。
山茶花さんに宿泊させて欲しいと来る遍路が居たそうなのですが、宿泊はしてないので断って「清水屋」「みゆき荘」を紹介してたらしいのですが、どうしても泊めて欲しいと懇願する遍路がいて泊めたらしいのです。
(よほど疲れていたのでしょうね!)その遍路が女将さんに是非宿をやって欲しいと言われたそうです。その後口コミで聞いた遍路が泊めて欲しいと言って来た時には泊めていたらしいのですが、女将さんが決断して宴会場として使っていた大広間を2分割してエアコン、布団等々の設備をして保健所に届け出て営業を始めたのだそうです。
ただ「清水屋」「みゆき荘」が以前から有りますので、宣伝などはせずに歩いてくる遍路を対象にしているそうです。「清水屋」さんは平等寺まで車での送迎をしてくれます。
設備投資した資金が利益として上がって来ることは殆ど無いそうですが、本業の食堂でまかなっているそうです。決して団体目当てではないそうです。
鶴林寺、太龍寺(現在納経所になっている所が宿坊だったそうです)が有ったそうですが御存知のとおり現在はやっていません。
山茶花の女将さんには感謝です。 合掌
合点!ガッテン!
立江寺からの歩きで、宿泊点を間違えると、
特に鶴林寺、太龍寺のコースで所要時間の
見込み違いをすると、このあたりに宿が欲しいです。
すんませ〜ん!
ちょいと、更新も遅れそうです。
すんませ〜ん!
◆通りすがり様
なーーーるほど!!
ガッテン承知のスケでございます。(古っ!)
山茶花さんは、もともと食堂だったんですか。
知りませんでした。
あの大広間は団体さんの座敷でもあったわけですね。
謎がひとつ解けました。
ありがとうございました。